
皆さんこんにちは!
株式会社上市屋銘木店、更新担当の中西です。
~アスファルト化~
日本各地で道路や宅地の不透水面(アスファルト・コンクリート)が増えると、森林と流域のバランスが変わります。林業にとってはアクセス性の向上というメリットと、水循環の乱れ・土砂リスク・生態断片化というデメリットが表裏一体。現場で役立つ要点をまとめます。
浸透↓・表面流出↑で、下流の増水ピークが立ち上がりやすくなる。
森林側では渇水期の湧水・沢水が細りやすい=苗木活着・間伐後の更新に影響。
アスファルト道路からの集中排水が谷頭や法面に当たるとガリー侵食や小規模崩壊の引き金に。
対策
透水型舗装・側溝の分散放流、路面横断排水(カットオフ)・雨庭/調整池の併設、渓畔部の緩衝帯(バッファ)設定。
舗装・造成で土壌の団粒構造が壊れ、保水・通気が低下。
集材路や土場の恒久舗装は泥濘を減らす一方で、雨の“逃げ道”を用意しないと周囲の林地へ負荷集中。
微地形(凹凸)を均してしまうと、実生床や林床植生が痩せる。
対策
土場は半透水化+周縁に浸透帯、法面はヤシ繊維マット+早期緑化、路網は等高線追従で切土・盛土を最小化。
舗装道路は生息地の分断を招き、ロードキルや外来種侵入の回廊になりやすい。
林縁は乾燥・高温・風当たりが強まり、スギ・ヒノキ若齢林や広葉樹更新に不利。
対策
野生動物横断構造(ボックス・カルバートの改修)、在来種での林縁帯再生、路肩の外来草本管理を年次計画に。
メリット
素材運搬の効率化、災害時の消防・救急アクセス、観光・レクリエーションの受け皿。
リスク
人流増で不法投棄・たき火・盗伐の監視負荷↑。
降雨強度が大きい地域では、補修・排水維持コストが嵩む。
運用の勘所
IOTカメラ・入退管理、路網台帳×ドローン点検で維持管理を省力化。
地元と協定を結び、林道の目的外利用ルール(オフロード、BBQ等)を明文化。
機能:常時通年通行が必要?(救急・観光・通学・物流)
地形・土質:集水が集中する谷頭・崩壊地形は非舗装+透水設計を原則に
生態:希少種・渡りルートがあるか(あれば回避or横断構造)
維持費:10年スパンのLCCで比較(補修・排水清掃・法面緑化含む)
代替案:簡易舗装・スラリー・固化土など“半透水”や間欠舗装を検討
透水性舗装+生物浄化側溝(バイオスウェール)
交差点手前にレインガーデン、末端に小規模調整池
法面は粗朶・丸太筋工+在来種播種で土砂動態を抑制
路肩の侵食長(cm/年)/側溝の堆砂量(L/回)
林縁の枯損・倒木本数/外来草本の被度
小流域でのピーク流量比(整備前後の比較)
補修発生件数/㎞・年と費用/㎞・年
観光林道の一部を透水化+分散放流に改修 → 豪雨後の路面損傷が減り、下流の濁り苦情が激減。
製品運搬路は交差点と急勾配部のみポイント舗装、中間は砕石路盤+排水横断で維持費を半減。
アスファルト化はゼロか100かではありません。
林業の視点では、「舗装する場所の選択」×「透水・排水」×「緑の補償」が鍵。
この三点を設計と運用に落とし込めば、アクセスの利を活かしつつ、水・土・生態系・経営の健全性を同時に守れます。
弊社、株式会社上市屋銘木店では一緒に森林を守る仲間を募集しています!
皆さんこんにちは!
株式会社上市屋銘木店、更新担当の中西です。
~自然区域~
日本の森林は、亜寒帯→冷温帯→暖温帯→亜熱帯へと南北・標高で滑らかに切り替わります。さらに日本海側の豪雪、太平洋側の台風・塩害、内陸の寒暖差というローカル条件が重なり、同じ樹種でも“育て方”が変わります。林業経営に直結する観点で、主要な自然区域と勘所をまとめました。
主な樹種:エゾマツ・トドマツ・ダケカンバ・カラマツ
現場リスク:強風・着雪折損・凍害、エゾシカ食害
経営の勘所
長伐期&選木・択伐で蓄積を太らせる
冬期路網の凍結地耐荷を活かした搬出計画
防鹿柵・ツリーシェルターで再造林の初期保護
主な樹種:ブナ・ミズナラ・トチ・サワグルミ、人工林のカラマツ・スギ
現場リスク:豪雪・雪起こし、ナラ枯れ、急傾斜の土砂災害
経営の勘所
広葉樹の混交化で病虫害と風雪耐性を底上げ
架線集材と高性能機を組み合わせた省力搬出
雪圧対策(植栽密度・列向き・早期間伐)
主な樹種:スギ・ヒノキ・クヌギ・コナラ(照葉樹はシイ・カシ・タブなど)
現場リスク:台風・豪雨、シカ食害、乾燥期の活着不良
経営の勘所
主伐→再造林→保育を確実に(下刈・除伐・間伐の時期厳守)
花粉・台風対策で低花粉品種・耐風型枝打ち
渓畔・急傾斜は多層林化で土砂災害に強い森づくり
主な樹種:アカマツ・クロマツ、コナラ二次林、防潮・防風の海岸林
現場リスク:マツ材線虫病、塩害、山火事
経営の勘所
マツ単層林を広葉樹混交へ転換、抵抗性マツのポイント導入
海岸林は帯状の役割配分(前列=抵抗力、後列=多様性)
燃えにくい路網設計と下層燃料の管理
主な樹種:リュウキュウマツ・オキナワウラジロガシ、マングローブ(オヒルギ等)
現場リスク:強台風・塩害・外来種、薄い土壌
経営の勘所
防風林・景観林と木材利用のバランス設計
マングローブ域は保全優先+環境教育・ツーリズム連携
風当たりを読む**樹形づくり(剪定・枝打ち)**と密度管理
高温・多雨・強風の増加に合わせ、混交・多層・長伐期へシフト
病虫害(松枯れ・ナラ枯れ)は抵抗性樹種・抵抗性品種+発生前の更新で先手
シカ食害は植栽前から防護・誘引・密度調整を計画的に
土砂・洪水に対し、渓畔は広葉樹、尾根は耐風性針葉樹など機能配置
更新成功率(3年生存率)/成長量(m³/ha/年)
間伐実行率(計画対比)/混交率(広葉樹割合)
路網密度・可搬出率/病虫害発生率・再造林コスト/ha
□ 自分の林分はどの区域タイプか(気候帯+豪雪/台風/乾燥の補正)
□ 樹種構成は単層偏重になっていないか
□ 再造林の**初期3年計画(防鹿・下刈・補植)**は明文化済みか
□ 路網と土砂リスクの地形診断を更新したか
□ 病虫害の抵抗性樹種/品種の選択肢を検討したか
日本の“自然区域”は、樹種選定・育林・路網・防災の答えを教えてくれます。
自分の森を区域の文脈で捉え直し、適地適木×混交多層×防災設計へ。これが、収益性とレジリエンスを同時に高める最短ルートです。
弊社、株式会社上市屋銘木店では一緒に森林を守る仲間を募集しています!